現在にいたるまでメキシコとアメリカの緩衝地帯として翻弄されてきた広大なメキシコ北
部は、メキシコシティなどの政治・文化の中心部とも、また隣接するアメリカ合衆国とも
距離をとり続け、移民や歴史についての認識も異なる地域である。しかしその一方で、ア
ルフォンソ・レイェス、マルティン・ルイス・グスマンといったメキシコ北部出身の作家
によってメキシコ文学は豊かになってきた。メキシコ北部に注目することでメキシコ文学
やラテンアメリカ、世界の文学を新しい視点で読むことが可能になる。また、移民、麻薬
などさまざまな問題から注目を集めるメキシコ-アメリカ国境についてもメキシコ側の視
点から考えてみたい。